誘惑じょうずな先輩。
……いや、この人のことを鵜呑みにできるほど純粋な人間ではない、と思う。
……、わたしには関係ないけど、先輩、遊んでばっかだもん。
女の子が喜ぶ言葉、きっとぜんぶ把握してる。
なんて返せばいいんだろう、と考えていたら、先輩は保健室のベッドに腰掛けた。
「ねーえ、ゆんちゃん」
クイっとスカートの裾を引っぱられ、びっくりして先輩を見る。
聞いたことないくらい甘い声。
誘惑。
「ゆんちゃん、男いる?」
逃がさない、だけど、優しく。
正直に口を滑らせてしまう、その聞き方。
……、慣れすぎて、やだ。
「い、ませんっ……」
ばかにするなら、すればいいよ。
先輩みたいなチャラチャラプレイボーイからしたらわたしみたいなのはつまらないと思うけど。
わかってるくせに、聞くの、ほんとわるい。