誘惑じょうずな先輩。
「え……っ、そうなんですか、」
明らかにシュンとしちゃって、ぎゃくに申し訳なくなってしまう。
でも、そこで同情するなんてお門違いだから
沈黙しちゃって……、なにか話そうと話題を考える。
「あの……、な、んで、わたしだったの?」
そんなことを尋ねるなんて変だろうか。
でも、考えた結果。
これがコミュニケーション下手の頑張りの結果。
歳上なのにそんなことしか話せなくて……、
申し訳なさすぎる。
けれど、後輩くんは変な顔ひとつせずに、むしろ嬉しそうに答えてくれた。
「廊下で早矢くんと歩いてるの見てから……、ひとめぼれなんです」
「え、」
ハヤくん……?
って、わたしの耳が正しかったら、万里先輩のしたの名前……?
…………え?
ここにきて、突然の万里先輩の名前に戸惑いが隠せない。
もしかこの子、先輩の知り合い?