誘惑じょうずな先輩。


なんでメイド服なのか、尋ねたら彼女ははにかみながら

「神田くんが来るかな、って」

と言うものだから、健気で愛しくなって、ぎゅうっと抱きついた。



「も〜〜、ゆんも、バンリ先輩に見せたいでしょ?」


「い、いや……、むしろ見せたくない、というか」



「なんでよ〜〜、こんなに可愛いのに!」



胡子ちゃんはそう言ってくれるけど、
先輩に見られるほどのものではない、なんてひねくれたことを思っちゃう。


先輩はきっと、着飾った素敵な女の子は見慣れてる。


わたしを見たところで、なにも思わないのはわかってること。



でも、わたしだって女の子だもん。

いつもとちがう格好して……、先輩に褒めてもらいたいなって思うのは普通だよね?



だから、当日はうんと可愛くなりたい。

思うのは、自由ってことだ。




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