誘惑じょうずな先輩。
「ま、男には気をつけて〜」
ヒラヒラ〜と手を振ってどこかに行ってしまった夏川くん。
わたしたちと会話を近くで見ていた胡子ちゃんは、にやにやと笑って言った。
「ゆんはさ、クラスにあんなにいい男いても、バンリ先輩なんだ?」
「え、どういうこと……?」
「夏川氏もモッテモテなんだぞ、ああ見えて」
「へえ……」
まあ、モテるだろうなぁとは思っていたけど。
そんなにだとは……、あまり感じてなかった。
でも、夏川くんはなんだかんだ優しいし、面倒見いいし、男の子っぽいし。
高校生らしくて、かっこいいと思う。
……でも、だからといって、夏川くんを好きになることはこの先、ないと思う。
それは、夏川くんもいっしょ。
わたしと夏川くんは、そういう関係だから。
いい友だち、なんだと思う。
男女の友情だって、きっと成立するんだから。