誘惑じょうずな先輩。


「ねえ、きみ、彼氏いないの?
よかったら連絡先とか交換しない?」


こういうことも、少なからずある。

あまり経験がないから怖いし焦るしで、どうしようって思うけど。



「あっ……、の、結構です、」



「そう言わずにさー」


「……お客さま。
ここはあくまで写真館ですので、ナンパはご遠慮ください」



面倒そうな顔してそうやって夏川くんが助けてくれるから、ほんとに感謝している。


「ちっ、彼氏いんのかよ」



夏川くんのことを彼氏と勘違いして去っていってくれるんだけど……、これはちょっと夏川くんに申し訳ない。



「ごめんね、夏川くん……」


「は? 香田さんのナンパくらい予想してたけど」


「え? あ、そういうことじゃなくて……、
わたしの恋人と思われちゃって、……申し訳なくて」


「はあ? そんなん気にすんなよ」



「……ほんと、優しいね」


「香田さんが泣きそうな顔してっからだろーが」


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