誘惑じょうずな先輩。
いつものお昼休み。
日差しが入ってぽかぽかする保健室で、ふあ……っとあくびをひとつ。
委員会の仕事でここに居座ってるわけだけど、だれも来ない。
保健室に来ない、ということは平和であるということで、なんにも悪くないわけで。
けれど、少しだけ淋しい気持ちもあったりなかったり。
養護教諭の愛先生は、だいたいふらふらグラウンドや廊下を見回っているから、保健室にはほぼわたししかいない。
「あっれ〜〜、バンリどこ行った?」
その穏やかな日々に、聞こえるのは とある先輩 の名前。
いい噂のない、遊び人。
彼のまわりにはいつも女の子が群がっている。
「どっか行っちゃったね〜〜」
廊下で会話をしているのか丸聞こえ。
別に、そのことに関して問題はいっさいない。
だって、わたしには先輩との関わりがないんだもん。
けれど ____
平穏な日々とは、一瞬にして消え去ってしまうもの。