誘惑じょうずな先輩。
「……あーあ。
真っ赤になっちゃってー」
よしよし、とびっくりするくらい優しくわたしの頭に手を置く先輩。
先輩にとったら、何気ない行動ひとつ。
それは、わたしにとったらどうしようもなくドキドキする行動のひとつなのに。
そういうところ、ほんっとフェアじゃない。
「先輩なんて、……っ先輩の匂いなんてキライ……っ」
距離が近いせいで、あまりわからなかった知らない女の人の匂いがツンとする。
それが先輩の匂いじゃないってわかってるから、心でどこか、白けてしまう。
思い切って本心を伝えてみる、けど。
先輩の視線は、まっすぐわたしに向けたまま。
「……ナマイキ、だね」
万里先輩は、くんくんと自分の制服の匂いを確認して、そう微かに笑んだ。
「……っ、」