誘惑じょうずな先輩。
先輩、……そんな顔するんだ。
愛しくて、愛しくて、仕方がなさすぎるよ。
まだ知らない先輩を、教えてほしい。
ぜんぶ、受け止めるから。
「ねえ、ゆんちゃん」
「なんです、か」
「最後の『まってて』てお願い、聞いてくれる?」
先輩は、……待たせすぎなんだよ。
こうやってどんどん溺れさせてゆく。
こんなにも、もう好きで好きで仕方ないのに。
これ以上、待てなんてムリだよ。
黙りこくってるわたしに、先輩は優しく頭をなでて言った。
「あと30分。
___ 講堂で、まってて」
…………え。
フリーズしたわたしのおでこに、ちゅっと唇をのせたあと、先輩は講堂の中へ……、入っていった。
おでこが……、あっつい。
「意味深、ですよ、……だいすき先輩」
講堂に呼び出した理由。
それは、30分後にわかること。
ひとつの希望に思い至った瞬間、いても経ってもいられなくて、胡子ちゃんに会いたくて、自分でも驚くほどの瞬足で教室に戻った。