誘惑じょうずな先輩。
どき、どき。
当事者じゃなくても、思わずみんな、拳を握る。
静まりかえる講堂。
そんななか、ついにマリちゃんは口を開いた。
「……ごめんなさい!」
そう言った途端、なんとも言えないため息が浮かぶ。
けれど、マリちゃんの返事はそれだけじゃ、なかった。
「わたし、巡のこといままで意識したことなかったから、こんなふうに言ってくれると思わなくて……。だけど、想いを伝えてくれてすっごくすっごく嬉しかった」
そこまで一気に言って。
スッと息を吸ったマリちゃんは、本当に綺麗な笑顔を浮かべた。
「ありがとう!」
これには、講堂にいるみんなが、拍手喝采。
「……おう、こちらこそ聞いてくれてありがとう!」
巡くんはフラれた。
マリちゃんはフった。
想いは違っているはずなのに、どちらも本当に和やかな笑顔で……、なんだか思わず泣いてしまいそうになった。
……お疲れ様、巡くん。