誘惑じょうずな先輩。
きっと精神的なダメージを負ったはずの巡くんだけど、そこは司会者として、涙を拭いて声をあげた。
「え〜、次の告白は……」
それから、2番目、3番目と順番が過ぎていく。
そのたびに、一喜一憂したり。
けれど。
『30分後、講堂でまってる』
その言葉を、万里先輩を、心のどこかでずっと追いかけている。
「……ねえ、ゆん。
申し訳ないんだけど……、いっしゅん抜けてもいい?」
舞台を見つめていたら、隣にいた胡々ちゃんがそっと小声で尋ねてきた。
なにやら、心に決めた、そんな様子。
なにかただならぬ雰囲気に、「もちろん」と頷いた。
「がんばって、ね」
胡々ちゃんがいまからなにをしに行くのか、そんな野暮なことは聞かない。
だって、今日の胡々ちゃんは、その衣装とおなじで……“彼”のためだから。
「ありがとう、ゆん!」
そう言うなり講堂を去っていった胡々ちゃん。