誘惑じょうずな先輩。


すき、好き、大好き。


少し速い、先輩の鼓動が聞こえる。




「ズルいのは、ゆんちゃんだよ」




わたしを引き剥がそうとする先輩を拒む。


いまは、離れたくない。




「……かわいいんだな、もう」



困ったような、万里先輩の声が耳に届く。

先輩のかわいいは、魔法の言葉だ。



ドキドキが、止まらない。




先輩の魅力は底なしだ。


こんな素敵な先輩が、わたしのなんだって。

独占欲が、ありえないほど膨れ上がる。


もう、先輩を好きじゃなかったあの頃には戻れない。


……戻りたくない。



万里先輩は、わたしの唇をふにっと指で押した。

それがなにの前兆かなんて、言わなくてもわかる話。





「……キス、しよ」




ほら。

甘い甘い誘惑。


先輩は、それがいちばんじょうずだ。




そっと、顔をあげる。



先輩のアンニュイな瞳が、わたしをとらえて離さない。




「あんまかわいいことしてたら、……止まんないから、」







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