誘惑じょうずな先輩。
胡々ちゃんはとうとう呆れかえって、そう声をかけてきた。
後ろにいる夏川くんも欠伸なんてしちゃってる。
確かに、先輩だったら甘やかしてくれそうだけど……。
1時間前の休み時間に会ったばかりだし、なんたって昼休みだから早く保健室へ行かないといけないのだ。
……まあ、ほぼ仕事はないんだけどね。
スマホをポケットにしまい、席を立つ。
「保健室、行ってくるね」
「ゆんは保健室の住人か」
「うーん……、そうかも、」
違うけど。
でも、変な話だけど保健室には感謝してる。
先輩に出会えた場所だから。
「まあ、いいや。
行ってらっしゃい」
胡々ちゃんは仕方なさそうに見送ってくれた。
教室に背を向け、保健室へ向かう。
おなじ階にあるため、すぐに着いた。