誘惑じょうずな先輩。
「香田先輩は自覚ないのかもしれないですけど。
実はうちの学年で、けっこう先輩狙い多いですよ?」
「ええ?」
「前も人気ありましたけど……、早矢くんの告白で、よけいに香田先輩の可愛さ知れ渡ってファン増えましたもん」
俺もそのひとりですけど、って日向くん。
割と真剣に言ってくれてるけれど、そんなことはないと思う。
もしあったとしても、万里先輩の告白がきっかけで好いてくれてるなんて……、ちょっとおかしな話だ。
でも、嫌われるよりはぜんぜん嬉しい。
お世辞だとしても、気持ちだけ受け取っておこうと思う。
「先輩……、鈍感ですね、」
「へ? な、なにが?」
「ぜんぶですよ、ほんと」
「……?」
今日は、呆れられることが多い日だ。
さっきの胡々ちゃんや夏川くんといい、日向くんといい。
わたし……、知らない間にいろいろ人を困らせてしまってるのかもしれない。