誘惑じょうずな先輩。
よくわからないから、曖昧に首を縦に振って誤魔化した。
それを見た日向くんは、なにが面白いのかクスッと笑ってから、扉の方へ歩み寄った。
「……でも、早矢くんが幸せそうで良かった」
「……え、」
「あ、いえ。
あの人、一応元遊び人なんで気をつけてくださいね」
「う、……うん」
……いま、わかった。
きっと日向くんは、万里先輩が心配だったんだ。
……先輩、ほんとにいろんな人に愛されてるね。
日向くんは歳下だけど、わたしよりも周りを見ていて、且つ大人っぽい。
きっと、ステキな女の子が日向くんを見つけるんだろうな。
「あんまりいると早矢くんに怒られるから、お暇します。
では」
「あ……っ、もう?」
もっと、話していってもいいのに。
そう思って言ったのに、日向くんはちょっと困った顔をして……、呟いた。