誘惑じょうずな先輩。
……そんなに笑わなくてもいいのに。
むすっとするわたしに、愛先生はやっと笑いを抑えて穏やかに言ってくれた。
「万里くんのおかげね」
急にそんなことを言い出すものだから、戸惑うも、反論もなにもなくこくりと頷いた。
愛先生の言葉。
いまのわたしがあるのは、万里先輩のおかげ。
そのとおりだと思う。
あのときのわたしたちは、いまと関係性がぜんぜん違くて。
プレイボーイで女の子好きな万里先輩と、フツーの保健委員のわたし。
ほんとに関わることのない人種で、出会ったことは奇跡のよう。
惹かれるのは、偶然じゃなくて必然だったのかもしれない。
最近、そう、よく思う。
「いまじゃ万里くん、ゆんにべた惚れだもんねえ」
「そ、うですかね、……でも、」
確かに先輩は想いをよく伝えてくれるけど。
どちらかというと。
「最初から、たぶん、わたしのほうが……べた惚れ、です」