誘惑じょうずな先輩。


わたしのほうがべた惚れです、とか、言っちゃったし。


それは愛先生相手だから言えただけで。



ほら、万里先輩とっても嬉しそうに片眉あげてるし。




……とたんに恥ずかしくなって、俯いた。




「いいなあ、春だね」




そんなわたしたちを見ていた愛先生は呟く。


いまの季節はもうすぐ冬だけど、いまはそういうことを言ってるんじゃないと、さっきのいまで、ちゃんと学習した。



そこでふと思う。




愛先生くらいの歳になっても。


5年、10年経っても。



先輩のとなりは、変わらずわたしなんだろうか。




そうであってほしいと、思う。



この先、なにがあるか計り知れないけれど、そういうの抜きでずっと先輩の彼女でいたい。





目先だけでなく、未来まで見据えられるようになったのは、先輩つきあって時間が経って。

余裕が出てきたからなんだと思う。






< 288 / 303 >

この作品をシェア

pagetop