誘惑じょうずな先輩。
わたしのほうがべた惚れです、とか、言っちゃったし。
それは愛先生相手だから言えただけで。
ほら、万里先輩とっても嬉しそうに片眉あげてるし。
……とたんに恥ずかしくなって、俯いた。
「いいなあ、春だね」
そんなわたしたちを見ていた愛先生は呟く。
いまの季節はもうすぐ冬だけど、いまはそういうことを言ってるんじゃないと、さっきのいまで、ちゃんと学習した。
そこでふと思う。
愛先生くらいの歳になっても。
5年、10年経っても。
先輩のとなりは、変わらずわたしなんだろうか。
そうであってほしいと、思う。
この先、なにがあるか計り知れないけれど、そういうの抜きでずっと先輩の彼女でいたい。
目先だけでなく、未来まで見据えられるようになったのは、先輩つきあって時間が経って。
余裕が出てきたからなんだと思う。