誘惑じょうずな先輩。


「胡々も最近楽しそうだし……、ちゃんと恋してるみたいで良かった」


「あ……、わたしもそれ、思います」



一度は傷を負った胡々ちゃん。


直接聞いてはないけれど、神田くんなにかがあったのは勘付くものだ。



そのときに胡々ちゃんを支えられる存在でいたかったけれど、その役目はきっと、わたしではなかったと思う。



だからこそ、最近、胡々ちゃんは夏川くんといて輝いているんだと感じるんだ。




「いまにしかできないこと、しときなよ?
若いおふたりさん」



愛先生はそう言うけれど、先生だってじゅうぶん若い。


しかも元遊び人と結ばれて結婚しているのもあってか、先生に失礼かもしれないけど、もはやわたしのお姉ちゃんみたいな存在だ。



相談でもなんでもできる、そんな存在。




「じゃあ、先生。
ゆんちゃん借りてもいい?」



わたしの制服のブラウスをちょいちょいと引っぱりながら、先輩はゆるく言う。






< 289 / 303 >

この作品をシェア

pagetop