誘惑じょうずな先輩。
困ったようになんとか言って、わたしを解放した先輩。
篭っていた熱が冷やされて、頭も同時に冷やされる。
先輩の雰囲気は危険だ。
操られ、誘惑に負けてしまう。
どうしたら、先輩から余裕を取れるんだろう。
「ゆんちゃん、もっかい抱きしめさせて」
え、って戸惑ってるわたしに構わず、
ぎゅーっと強く優しく抱きしめてくる先輩。
なんの意味があるの、なんて、頭真っ白で、聞けない。
どれくらいそうしていたかわからないけど、先輩は余韻を残すようにゆっくり離れて、
「俺らしくねーの」って呟いた。
「せ、……先輩?」
先輩がわたしになにかを求めてくるのなんて慣れたようだけど、なんか、いまのはちょっと違うかった。
わたしの許可は聞かなかったけど……、
そう、
誘惑、じゃない気がしたんだと思う。