誘惑じょうずな先輩。
……わたしは、こんなにも先輩に夢中なのに。
この温度差が、大きくてもどかしい。
先輩のまっすぐな瞳に見つめられて、なにも言えないでいると、ガラッとドアが開く音がして、慌てて先輩から身を遠ざけた。
「あれ、万里くん来てたの〜」
入ってきたのは愛先生。
万里先輩がいるということに関して、軽すぎるタッチに唖然とする。
……ほんとに、知り合いだったんだ。
わたしなんて放ったらかしで雑談しているふたりを見て、妙に納得する。
……万里先輩も、愛先生も、なんだか性格が似ているから、気が合うんだろう。
自由人で掴めないとこ、そっくりだ。
楽しそうに話していたふたりだったけれど、ちょっと会話を交わしただけで、先輩はもう戻ろうとする素振りを見せる。
「それじゃあ、ゆんちゃんも、愛先生もバイバイ〜」
お気楽に手を振って、今日はちゃんと保健室の扉から出ていった先輩。