誘惑じょうずな先輩。
こまった先輩
.
「香田さんって、バンリ先輩と仲良いの?」
特になにもない日が続いて、2週間。
万里先輩が保健室に来る頻度は……、
週に2、3回程度。
そのたびにからかわれていることを実感しているわけだけど……、押しに弱いせいもあって、断れない日々を送っている。
「え、うぇ、えっと……、」
万里先輩と仲良いのか。
授業が終わった休み時間、そう尋ねてきたのは、となりの席の夏川誉くん。
中性的なイケメンで、でも、ちょっと男っぽいところが女の子に人気らしい。
らしい、というのは、女の子たちのうわさの的でよく話されているから。
「仲良い、っていうか、……」
男の人は、なんだか苦手で、相手は悪くないのに挙動不審になってしまう。
口下手なわたし、コミュニケーション能力皆無のわたしに、焦ることなく頷いてくれる夏川くん。
ちょっと、ほんのちょっとだけ、万里先輩の雰囲気と似ていて、安心してしまった自分がいた。
「よく話す、せ、んぱいって感じ、かな?」
「……ふーん、」
そっかあ、となにか考える仕草をする夏川くん。
なんでそんなこと気になるんだろう、なんて野暮な質問だろうか。