誘惑じょうずな先輩。


そう改めて思ってしまうと、なんだか苦しくて胸がキリキリと痛んだ。



「あの頃は、特別なのは自分だけだと思っちゃったのよね」



切なく微笑む愛先生は、わたしをじっと見つめている。


きっと、これは忠告__ アドバイス。




けじめがなければ後悔するよ、ってそう語りかけてくる目。



「でも、彼を好きだった気持ちにうそはないわ」



にこっと目を細める愛先生に、グッと唇を噛む。



先輩のいちばんになりたい、って思ったしまったあのとき。


特別なのは自分だけじゃない、って忘れてしまいそうになった。



そういう危ない雰囲気に呑まれて、気づかないうちに夢中になって……、堕ちて。



そうして、けっきょくは捨てられてしまう、そんな未来が見えてしまった。






< 92 / 303 >

この作品をシェア

pagetop