幼馴染からの抜け出し方
「そろそろシャワーでも浴びるか」
片手でネクタイを外しながら、ゆっくりとソファから腰を上げる。
いつもなら帰宅してすぐにスーツを脱いで部屋着へと着替えるけれど、今日は空腹の方が勝ってしまい、すぐに夕食を取り始めた。
とにかく忙しい一日だった。そのせいで昼食を抜いていたこともあり、帰宅途中にあるコンビニで買った弁当を家に着くなりがっつくように食べた。
そのあと何気なく付けたテレビで流れていたドラマに見入ってしまい、シャワーを浴びる時間もいつもよりも遅くなってしまった。
シャンプーで頭を洗っている今も、先ほどのドラマの内容が頭の中でぐるぐると再生されている。
あの高校生の幼馴染ふたりの関係は今後どうなっていくのだろう。
どうか、幸せになれる結末でありますように……。
そんなことを願いながら浴室を出ると、下にバスタオルだけを巻いた状態でリビングへと戻る。そして、テーブルの上のリモコンを手に取ると、先ほど見たドラマを毎週録画に設定した。
リモコンをテーブルへ戻すと、隣に置いてあるスマホの着信ライトが点滅していることに気が付く。確認すると、それは俺の幼馴染からのメッセージだった。
【今から由貴ちゃんのマンションに行ってもいい?】
受信されたのは今から十五分ほど前。ちょうどシャワーを浴び始めた頃だったので、気が付くのに遅れてしまった。