幼馴染からの抜け出し方

「いらっしゃい!」


 店内に足を踏み入れると、カウンターにいる五十代ぐらいの男性が明るく陽気な声で迎えてくれた。おそらく店主だろうか。彼は、由貴ちゃんを見てハッとした表情を見せる。


「おっ! お兄さん、この前も来てくれたよな」

「はい。二週間ぐらい前に」

「だよな! すっげーイケメンだから覚えてたんだ」


 ガハハハと店主のおじさんは豪快に笑った。

 それにしても、由貴ちゃんがイケメンだというのは女性だけではなく男性――しかも、おじさんも認めるものらしい。

 そんな誰もが認めるスーパーイケメン幼馴染を自慢に思いつつ、店内を見渡せばカウンター席と小上がりの席は満席状態。けれど、カウンターの奥の二席がちょうど開いたので、そこに私と由貴ちゃんは腰を下ろした。


「はいよ、生ふたつね」


 まだ注文していないはずなのに、グラスに入った生ビールがふたつテーブルに置かれた。どうやら開店祝いで今だけ最初のビールが無料らしい。

 そのあとは、前にも一度このお店に来たことのある由貴ちゃんオススメの串焼き盛り合わせと、単品でほくほくじゃがいものチーズ乗せが美味しそうだったので私が頼んだ。


「とりあえず乾杯しよっか」


 由貴ちゃんが生ビールの入ったグラスを持ち上げたので私も自分のグラスを手に取った。カチャンとふたつのグラスがぶつかる。

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