幼馴染からの抜け出し方

 明日、出張を控えている由貴ちゃんはまずは控え目に一口だけを飲む。一方の私は喉が渇いていたのでけっこう豪快に飲んでしまった。そんな私を由貴ちゃんが静かな口調でたしなめる。


「めぐ、飛ばし過ぎない。弱いくせに」

「はい。すみません」


 ことん、とグラスをテーブルに置いた。


「はいよっ! おまちどおさん」


 店主の男性がカウンターから手を伸ばして焼き鳥盛り合わせのお皿をテーブルに置いた。


「お兄さん。今日は彼女とかい?」


 にやにやしながら聞いてくる店主は、どうやらお客に積極的に話し掛けてくるタイプの人らしい。


「いえ、幼馴染です」


 由貴ちゃんがすかさず答えると、「なんだ彼女じゃねーのか」と店主はなぜか残念そうだ。すると、それに対して由貴ちゃんは小さく笑いながら「彼女だったらいいんですけどね」と小さな声でぽつりとこぼす。


 ……え?


 思わず私は由貴ちゃんへ視線を向けた。なんか今さらっと気になる発言をされたけれど、その言葉の意味を深く考えるよりも先に、店主に声を掛けられた。


「いいねぇ、お姉さん。こんなにイケメンの幼馴染がいて」

「アハハ。そうですね」

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