幼馴染からの抜け出し方

 出張先がどこの国なのかは聞いていないけれど、またいつもみたいにお土産を買ってきてくれるだろうからそのときに行先の国はわかるはず。


「んーと、十一時半だったかな」

「空港までお見送りに行きましょうか。私、明日は休みだから。検査場の入口で、バイバイ由貴ちゃーん!無事に帰ってきてねー!お土産も忘れないでねー!って、手を振ってあげるよ」

「恥ずかしいからやめて」

「えっ、そう?」

「それに、見送りはいらないよ。ただの出張だし」

「そっか」


 今度はどのくらいの期間の出張なのだろう。前のときは一週間で、その前のときは三週間だった。頻繁に会っているわけではないものの、なんとなく由貴ちゃんが日本にいないことを出張のたびに寂しく感じてしまう。

 あっという間に駅の入口まで歩いてきた。私と由貴ちゃんが乗る電車は路線も違うし、方向も反対だ。

 私が七番ホームで、由貴ちゃんは四番ホーム。改札を抜けると、それぞれの電車が発車するホームへとつながる階段の前で少し立ち止まる。


「今日はごちそうさまでした」


 おごってもらったのでお礼を言いながら深々と頭を下げると、「どういたしまして」と笑い声混じりの由貴ちゃんの声が返ってくる。


「じゃあまたね由貴ちゃん。出張頑張って」


 バイバイと手を振って、私は由貴ちゃんに背中を向ける。そのまま階段を一段だけ上がったところで「待って、めぐ」と呼び止められた。

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