幼馴染からの抜け出し方

 慌てて返信メッセージを打っていると、ピンポーンとチャイムの音が鳴る。


「えっ、まさかもう来た?」


 突然の来訪メッセージの返事をまだ返していないのに押しかけてくるなんて。きっと彼女は、俺が断る可能性なんて一ミリも想像していないのだろう。


「って、俺こんな格好だし」


 バスタオル一枚だけの自分に気が付いて、急いで適当な衣服を身に着ける。髪の毛はまだ少し濡れたままだけど、まぁ仕方ない。

 それよりも早く、玄関の外で待っている彼女を部屋に招き入れてあげないと。

 俺は慌てて玄関へと向かい、ゆっくりと扉を開けた。ひんやりとした空気と共にそこに立っていたのは――


「由貴ちゃんやっほー。来ちゃった」


 俺の、大好きな幼馴染だ。


「いらっしゃい。めぐ」


 笑顔でそう告げれば、安心したように彼女は笑った。その右頬が赤く腫れていることに俺はすぐに気が付く。

 そして、察した。彼女が今日、俺の家に突然やって来たのは、おそらくこの腫れた右頬に原因があるのだろう。

 いったい彼女に何があって、その右頬は誰にやられたのだろう。もしかして、また男関係だろうか。

 俺の幼馴染は男運が悪過ぎるから。

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