幼馴染からの抜け出し方
すると、テーブルの上に置いていたスマホがブルッと振動した。
「ん?」
どうやらメッセージを受信したらしい。確認すると由貴ちゃんからで、写真が添付されている。
夕暮れ時、まっすぐに伸びた河の両側にはレンガや石を積み上げてできた建物がびっしりと立ち並んでいる。
由貴ちゃんは海外出張のたびに、こうして私にその国の風景写真を送ってくれる。
今回の行先はヨーロッパだろうか。どこの国かまではわからないけれど、家の造りなどの雰囲気から予想するとたぶんそうだと思う。
うっとりするほど素敵な外国の街並みに見とれていると、スマホの画面にまた新たなメッセージが飛び出てきた。 一瞬、また由貴ちゃんからだと思ったけれど、違った。
【この間はごめん。一度会ってしっかりと話がしたい。会えないかな?】
それは、元彼の森谷君からだった。
私は、思わずスマホをベッドへ向かって投げつけてしまう。
今さらどういうつもりだろう。
森谷君のアパートで彼の本命彼女と鉢合わせて以来、私たちは連絡を取り合っていない。だから、浮気相手の私とはこのまま自然消滅になったと思っていたのに。
今さらなんの話があるのだろう。謝罪? それならいらない。もうそっとしておいてほしい。
森谷君のメッセージには返信をしない。私はもう二度とあの人には会いたくないし、話だってしたくないし、関わりたくもないから。