幼馴染からの抜け出し方
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「それで、なんて返したの?」
「ううん、返してない」
無視無視と言いながら、くるくるとフォークにパスタを巻き付けていく。
翌日の土曜日。
休日ということもあり百貨店は普段よりも来店者が増えるうえに、今日から七階にある催事場コーナーで全国の美味しいものを集めたイベントが期間限定で始まったので来店者がさらに増えている。
私の担当している子供服売り場もイベント目的で来店したお客さんが流れてきたため、いつも以上に人が多いし、売れ行きもいい。今月の売り上げ目標は余裕で超えられそうだ。
けれど、そのせいで接客に忙しくてお昼の時間がだいぶ遅くなってしまった。それはゆかりも同じだったようで、社食で見つけた彼女はだいぶやつれているように見えた。まだまだ午後の接客が残っているけれど、とりあえず今は静かな社食でお腹を満たす。
「でも、元彼が同じ職場、しかも同期ってかなり気まずいよね」
うどんをすすりながらゆかりが呟いた言葉に、私は同意するように頷く。
「やっぱりそうだよね。私もそこだけが気がかりだよ」