幼馴染からの抜け出し方

 そういえば去年寿退社した同じ売り場担当の先輩が言っていた。社内恋愛はこじれて別れたらめんどうだって。今なら先輩のその言葉が理解できる。

 迂闊だった。もっと深く考えてから告白の返事をすればよかった。なんて、すべて終わった今になって思ってももう遅い。

 幸いなことに森谷君は営業担当なので普段は外回りをしていることが多いから、販売担当の私とはめったに顔を合わせることはない。それでも、同じ職場内にいることに変わりはないわけで。

 今いる社食や社員通用口とかで偶然に鉢合わせすることがあるかもしれない。そのときに気まずい思いをするよりも、やっぱり一度しっかりと会って話をした方がいいのかな。でも、会いたくない。


「あ~、どうしたらいいんだろう」


 両手で髪をわしゃわしゃとかき回す。そんな私にゆかりは「とりあえず返信はしなよ」と言い残し、先に社食を後にした。

 時計を見ると私もそろそろ売り場に戻る時間なので、慌てて残りのパスタを口に詰め込んだ。

< 34 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop