幼馴染からの抜け出し方
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売場に戻ると、次に休憩に入る同僚に声をかけてからカウンターへ入る。午前よりも客足は落ち着いているものの、それでも普段の同じ時間帯よりは賑わっていた。
「あの……すみません」
発売された新商品のカタログをパラパラとチェックしていると控えめな女性の声が聞こえて顔をあげる。
おお、お腹が大きい! 妊婦さんだ。たぶん臨月ぐらいかな。
「なにかお探しでしょうか」
笑顔で声を掛けると、女性は「はい」とうなずいた。
「ベビードレスを探しているんですけど、どこにあるかわからなくて」
「ベビードレスですね。こちらになります」
妊婦の女性の隣には旦那さんがぴったりと寄り添って、マタニティマークのついた女性物のバッグを持ってあげている。今日はふたりで、産まれてくる赤ちゃんのためのベビードレスを購入するために来たのだろうか。いいな、なんだか微笑ましい。
「いま何ヵ月ですか?」
案内しながら妊婦の奥様に話し掛けると、真ん丸なお腹をさすりながら彼女は答える。
「九ヶ月です。来週から三十三週に入ります」
やっぱり私が思った通り臨月間近の妊婦さんだ。