幼馴染からの抜け出し方
「お腹だいぶ大きいですもんね」
「はい。最近は歩くだけで疲れちゃって」
「えっ。今は、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。ベビードレスを買うかどうかずっと迷っていたんですけど、やっぱり欲しくなってしまって、検診の帰りに立ち寄ってしまいました」
「そうだったんですね」
ベビードレスは、産まれたばかりの赤ちゃんが産院から自宅へ帰るときやお宮参りのときなどで着用されることが多い。白色の生地にレースやリボン、刺繍などが装飾されていて、赤ちゃんが着るとまるで天使のように可愛らしくなるのだ。
他の服で代用したりレンタルもできるので絶対に必要というわけではないけれど、記念に残る特別な服として購入する人もいる。
「性別はどちらですか」
ベビードレスのデザインは男の子でも女の子でも着用できるものが多いけれど、念のため尋ねてみた。すると、少し珍しい答えが返ってくる。
「実は、まだ分からないんです」
ね、と妊婦さんが隣の旦那さんへ視線を投げると、続きを旦那さんが話し始める。
「産まれたときの楽しみにしようと思っていて」
「わぁ! それは素敵ですね」