幼馴染からの抜け出し方

 そんな由貴ちゃんが手にとっているのは、ケーキの飾りがついたヘアゴム。子供用だ。


「これは三百円だよね」

「えっ、あ、いいよ。由貴ちゃんにはさしあげますので」

「そういうわけにいかないよ。めぐが頑張って作ったんだから、しっかりとお金を払って買わないと」

「由貴ちゃんにならあげるよ」


 という押し問答を何回か繰り返してから、由貴ちゃんの大きな手が私の手に百円玉三枚を握らせた。仕方ないのでここは私が折れて、お金を受け取る。


「みあちゃんにあげるの?」

「そう。みあはめぐの作ったヘアゴムが好きだから」

「それならいつでも作ってプレゼントするのに」

「いや、めぐの作ったものをこの場所で俺が買ってプレゼントしたいから」


 なんだかよくわからないけど、まぁいいや。

 ちなみに、みあちゃんというのは由貴ちゃんのお姉ちゃんの子供で今年四歳になる女の子だ。私もたまに会うけれど由貴ちゃんのお姉ちゃんにそっくりの可愛らしい容姿をしていて、少し恥ずかしがりやさんだけど素直でいい子だ。


「そういえば由貴ちゃんどうしてここにいるの? というか出張から帰ってたんだ」


 いつの間にか由貴ちゃんは私の隣に腰をおろして一緒に店番をしている。

< 42 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop