幼馴染からの抜け出し方
「あーあ。本当は、こんな形で言うつもりじゃなかったのにな」
由貴ちゃんが、へなへなとその場に力なく崩れ落ちるように座り込んでしまった。
「由貴ちゃん大丈夫?」
「大丈夫じゃない」
そう呟いて、由貴ちゃんがすっと立ち上がる。そして、私の目の前に立つと覆い被さるように私をきつく抱き締めてきた。
「えっ、ちょっと由貴ちゃん?」
驚いて声をあげると、私を抱き締める由貴ちゃんの腕にさらに力がこもる。
「あのとき、そういう意味でいつまでも幼馴染じゃないって言ったつもりだったんだ。いつまでも幼馴染じゃなくて俺はめぐの彼氏になりたいって意味で」
ああ、そういう意味だったんだ。やっとそれが理解できた。できたんだけど……。
「ゆ、由貴ちゃん。苦しいっ……」
長身の由貴ちゃんに力一杯抱き締められるとさすがに苦しい。対格差がかなりあるのでこのままだと潰されそうだ。
由貴ちゃんの大きな背中をパシパシと叩くと、ようやく由貴ちゃんの体が離れていく。
「ごめん、めぐ。大丈夫?」
「う、うん。なんとか」
私の肩には由貴ちゃんの手がそっと乗せられている。互いの顔の距離もすごく近い。
……どうしよう。
子供の頃から見慣れているはずの由貴ちゃんの顔が、今は直視できそうにない。