幼馴染からの抜け出し方
6.
*
翌日、眠い目をこすりながら出勤するとロッカールームでゆかりに会った。
「うわっ。どうしたのそのひどい顔。目真っ赤だよ」
私の顔を見るなりゆかりが驚いたように目を見開いたので、私は制服のブラウスのボタンを留めながらボソッと答える。
「一晩中、涙が止まらなくて眠れなかった」
「それってもしかしてまた森谷関係?」
「ううん」
力なく首を横に振る。
「由貴ちゃん関係」
「由貴ちゃん⁉」
隣で私服のワンピースを脱いでいるゆかりが驚いたような声を上げる。
「まさかあの由貴ちゃんがめぐみを泣かせるようなことしたの?」
「ううん」
私はまた力なく首を横に振る。
「由貴ちゃんが悪いんじゃないの。私が悪いの」
そう答えてから、昨夜の出来事をゆかりに打ち明けた。
森谷君が私に会いに実家まで来たこと。そこに由貴ちゃんがいて、私を庇って助けてくれたこと。そしてその流れで由貴ちゃんから告白をされて、動揺したこと。
「――それで、どうしていいかわからなくなって逃げ出したってわけか」
「そう」
「最低だな」
「うっ……」
ぴしゃりとゆかりに言われて、言葉に詰まる。
改めて言われなくても、私だって自分が最低なことをしたことぐらいわかっている。それでも、体が勝手に動いてしまった。