幼馴染からの抜け出し方
「私にとって由貴ちゃんは幼馴染だから。今さら好きとか付き合うとか彼氏とか、そういうの考えられなくて。どう答えたらいいのかわからなくなって……」
私は、告白の返事をしないまま由貴ちゃんから逃げた。
そしてその夜、一人で泣いた。涙が溢れて止まらなかった。なんだか無性に寂しい気持ちにおそわれた。
「なるほどねぇ」
制服に着替え終わったゆかりが静かにうなずく。
「それで、一晩泣いて答えは出たの?」
「ううん……」
出なかった。
私は、自分の気持ちがわからない。由貴ちゃんのことは好き。すごく好きだし、そばにいたいし、いてもらいたい。でも、きっとそれは由貴ちゃんの私に対する想いとは違うような気もしていて……。
どう答えたらいいんだろう。そもそも答えを出せるのかもわからない。それでも、由貴ちゃんの想いを受け止めて返事をしないといけない。
「ああああ~。どうしよう」
思わず頭を抱えてしゃがみこむ。そんな私にゆかりは呆れたようにため息をつきながら、「よしっ!」と大きな声を上げた。
「飲みに行こう! 私、明日は休みなんだけど、めぐみのシフトは?」
「えっと、早番だけど」
答えながら、顔を上げる。
「じゃあ、決定。明日の十九時集合。場所はまたあとでスマホに送るから」
せっかくのお誘いだけど、お酒を飲みたい気分ではない。けれど、ゆかりに誘われるまま断り切れず、飲みに行くことが決定してしまった。