幼馴染からの抜け出し方
――翌日、見事に風邪をひいた。
今朝、目が覚めたら三十八度を越える熱。頭も痛くてクラクラするし、咳も鼻水も止まらない。
原因はきっと昨日の夜だ。あのあと結局、傘を買わずに冷たい雨の中を駅までひたすら走った。家に着いても、濡れた髪と服のまま部屋のベッドに寝転んでそのまま眠った。そしたらやっぱり風邪を引いて熱を出した。
とりあえず家にあった熱冷ましの薬で熱は朝よりも下がったけれど、体がまだだるい。
こんなときに限って母親は不在。昨日から海外赴任中の父親のもとに行っていて、二週間は戻らないそうだ。
時刻はもうすぐ夜の十時になろうとしている。
「う~、つらいよぉ」
部屋のベッドに寝転びながら、付けっぱなしのテレビをぼんやりと見つめる。
流れているのは学園物の恋愛ドラマ。ストーリーは幼馴染の男女が高校進学をきっかけに互いの恋心に気づいていくという話。
今日初めて見たけれど、どうやらふたりはお互いの気持ちが通じ合い、その関係は幼馴染から恋人へと変わりハッピーエンドを迎えたらしい。
思わずそんなふたりと今の自分を重ねてしまい急激に落ち込む。
枕元のリモコンを手に取ってテレビの電源を落とした。