またいつか君と、笑顔で会える日まで。
「痛っ……!!」

すずが小さな悲鳴を上げる。卒アルが床に転がった。

「ごめん!!」

顔から血の気が引いていく。あたし、なんてことを――。

「やばっ、すず、血が出てる!!」

アルバムが当たった部分がわずかに切れて血が滲んでいる。

「誰か!!先生、呼んできて――!!」

教室中が騒がしくなるのに、どこか他人事であたしはすずを見つめていた。

子供の頃からあたしはこうやって他に意識を飛ばすことがうまくなった。

そうしないときっともうとっくに壊れてた。

これは自分じゃない。叩かれてるのも、蹴られてるもあたしじゃない。

あたしじゃない――。

スカートのポケットの中の小さな塊をギュッと握り締める。

「リリカがやったんだからね!!」

杏奈が怒鳴り、すずが非難する目をあたしに向ける。

現実に引きずり戻されたあたしはよろよろと後ずさりをして、自分の手を見る。

あたし……すずを傷付けた。あたしの手ですずを……――。

自分がされて一番嫌なことをしてしまった。

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