またいつか君と、笑顔で会える日まで。
青木萌奈side
「さっき職員室で職員会議があったみたい!リリカちゃん、一週間の謹慎処分だって」
「マジで~?やっぱり謹慎になっちゃったんだ」
教室のあちこちであがるのはリリカちゃんの話だった。
リリカちゃんがすずちゃんに暴力を振るったという話は瞬く間に学校中に広がった。
「リリカちゃんってちょっと変わった子だよね?何考えてるか分かんないっていうか」
「そうそう。なんか不思議なんだよね。それでいて頭もいいからもっと不思議!」
「でもさ、授業中も寝てばっかりだったじゃん?もしかしてだけど、カンニングだったりして!」
「ありえる!あの子なら、しそうだもん!!」
耳を塞いでしまいたかった。
あちこちから耳に届くリリカちゃんの悪口にめまいがしてくる。
事の発端を作った杏奈ちゃんとすずちゃんは普段と変わらぬ様子で席に座り楽しそうに言葉を交わしている。
リリカちゃんが謹慎処分になったキッカケを作ったのは二人なのに。
それなのに……。
『――やめなよ』
リリカちゃんの声で視線を彼女に向けた時、ハッとした。
緑色のアルバムに見覚えがあった。目を凝らすと私の母校の中学名が記されていた。
どうして私の学校の卒業アルバムをリリカちゃんが……?
そんなことを考えている間に、3人がもみあいになった。
二人がリリカちゃんの手の中のアルバムに手を伸ばしている。それをリリカちゃんは必死に抵抗していた。
ピンときた。リリカちゃんは私の為に彼女たちと戦ってくれているのだと。
あの卒業アルバムはもう家にはない。
とっくの昔に処分してしまったから。
卒業アルバムを捨てる行為を大体の人間は躊躇するだろう。
その中には3年間の思い出がぎっしり詰まっているから。
だけど私はそんなもの全てなくなってもいいとすら思った。
アルバムの中の私を、私は注視することができなかった。目を反らしてしまった。