またいつか君と、笑顔で会える日まで。
「可哀想……リリカちゃんがですか?」

「そうだよ。親に虐待されるなんて……そんなむごいことがある?ネグレクト、っていうんだっけ?とにかく彼女は親にひどい仕打ちを受けてるの」

――虐待。ネグレクト。

その言葉に私は凍り付いた。

「あの子のお母さんは本当に酷いよ。彼氏だか内縁の夫だか知らないけど、男連れ込んで一緒になって夜中まで酒を飲んで大騒ぎするの。ここ最近は毎日だもの」

「リリカちゃんのお母さんが……?」

「えぇ。このアパート古いでしょ?だから、壁も薄いし会話も全部筒抜けなの。最近はほぼ毎日男の怒鳴り声やら何かが壊れる音やらするのよ。そのあとに必ず「ごめんなさい」って謝る声が聞こえてくるの。何度も何度も。きっとリリカちゃんが謝ってるんでしょうね」

おばさんは苦しそうに表情を強張らせる。

私は必死になって両足に力を込めた。

あまりの驚きに腰が抜けてしまいそうだった。

ふいに以前のことが頭を過った。
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