またいつか君と、笑顔で会える日まで。
リリカちゃんらしき少女が電話をしていた。彼女は電話口の相手に『ごめんなさい』と今にも消え入りそうなほど弱々しい声で謝っていたんだ。

「高校に入学すると同時に髪の毛も染めてね。どうして染めたのか聞いたらなんて言ったと思う？『白髪が目立っちゃうから染めてるの』って言うのよ。毎日ストレスにさらされてたんでしょうね。足だってあんなに細くなっちゃって。『ダイエットしてる』ってやせ我慢して言ったり……。もう見てられなくて」

そんな……。白髪が原因で髪の毛を染めていたっていうの？おしゃれのためだったんじゃないの？

「カラーコンタクトをするのも自分を強く見せるためだって言っての……」


成績優秀で容姿端麗で才色兼備。リリカちゃんは順風満帆な人生が約束されていると思っていたのに。

まさかリリカちゃんが。リリカちゃんの顔がぐらりと揺れる。

いつだって笑顔で眩しくて太陽みたいに明るくて。

誰とでも仲良くなれて日々楽しそうで何の悩みもなさそうな彼女の根底が揺らぐ。

なんで。どうして。どうして私は彼女のことをもっと早く知ろうとしなかったんだろう。

彼女は私に手を差し伸べてくれていたのに、どうしてすぐに握り返さなかったんだろう。

『萌奈』

リリカちゃんの明るい声が蘇る。

どうして言ってくれなかったの。どうして……。

「何度も彼女に声はかけたのよ。どこかに相談した方がいいって。このままじゃいけないって。でも、頑なに拒むのよ。どんな親だってあの子にとってはたった一人の母親だもの。気持ちは分かるわ。でも……でもね……」

おばさんがリリカちゃんのことを考えているのが伝わってくる。
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