またいつか君と、笑顔で会える日まで。
私にできることをしよう。リリカちゃんを救うことは私にはできないかもしれない。

だけど、寄り添うことならできる。ぐっと両足に力を込めた。

廊下を駆け出し、階段を駆け下りる。必ずリリカちゃんを探し出す。

「――ねぇ、たっくん~!聞いてるぅ?」

階段を降りた視線の先には腕を組んでこちらに向かって歩いてくる男女がいた。

女性は千鳥足で男性がいなければ立っていることもやっとという様子。

明らかに柄の悪い男と40代半ばの髪を茶色に染めた派手な女性。

背格好やまん丸の目がリリカちゃんそっくりだった。

二人が私の横を通り過ぎていく。昼間からお酒を飲んでいたんだろうか。二人からは強烈な酒の臭気がした。

とっさに振り返ると、私は反射的に声をかけていた。

「あっ、あの!!」

男女が私の声に反応して振り返る。

私は二人の前まで駆け寄ると、「リリカちゃんのお母さんですか……?」と尋ねた。

「そうだけど。えっ、あなたはぁ?」

リリカちゃんのお母さんは驚いたように瞬きを繰り返すと、相当酔っているのか私のことをトロンッとした目で見つめた。

「初めまして。リリカちゃんと同じクラスの青木萌奈です。リリカちゃん、家にいますか……?」

「リリカ~?知らないけど、家にはいないと思うよ。ねぇ、たっくん?」

「さあ?知らねぇな」

男はめんどくさそうに答えると、「先行ってるぞ」と吐き捨てるように言って私を一瞥すると階段を上がっていってしまった。

ゾッとするように冷たい口調と鋭い目つきにたじろぐ。

リリカちゃんはこの男に暴力を振るわれているんだろうか。こんな大男に……。

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