またいつか君と、笑顔で会える日まで。
『時には誰かに甘えたっていいじゃない。人に頼ることも時には大事なことよ?自分のこともっと大切にしてあげて』

息が切れる寸前だったのに必死になって走り続けてきた。

だけど、少しだけ誰かの力を貸しもらってもいいのかな……?

バイトすることはもうできないし、学費を払うことができない。

高校へ通い続ける道はもう残されていないんだろうか……?

いや、まだ諦めてはいけない。いったい、どこへ相談すればいいんだろう。まずは担任の先生か。そうだ。一度、正直に今の状況を話してみよう。

そのあと役所にも相談してみよう。

そして、謹慎中の1週間でゆっくりと自分と向き合おう。

今までのこと、これからのこと。臨床心理士になるという夢を叶えるために。

あたしのように苦しんでいる人の話を聞いてあげられるように。生きる希望になれるように。

「……ただいま」

玄関の扉に鍵はかかっていなかった。

扉を開けた瞬間、全身にまとわりついてくるのはタバコの匂いとお酒と吐しゃ物のすえたような匂いだった。むわっと暑い部屋の中に足を踏み入れる。

どうしてこんなにも汚せるのだろうかと不思議になるぐらいの部屋の散らかりようだった。

バッグを玄関先に置いてその上に手に持っていたスマホを置いた。
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