またいつか君と、笑顔で会える日まで。
今まで感じていた痛みもすべてがなくなる。まるで無だった。何かを考えるとか感じるとかそんな余裕は一切ない。

反射的に立ち上がり、床に座り込む母に更に拳を叩き込もうとしている高橋の手を押さえつけた。

「――やめて!!お母さんを叩かないで!!叩くならあたしを叩け!!」

高橋が振り返った。

途端、顔面に強い衝撃を受けた。視界が狭まり、崩れるようにしゃがみ込む。

強い痛みに思わず顔を抑えると、鼻から血が溢れてくる。

ぼやけた視界に肌色の何かをとらえた。それが爪先だと気付くのに時間がかかった。

腹、腰、背中。何度も何度も全身を蹴り飛ばされて息ができない。

内臓をえぐられたような痛みが全身を突き抜けたとき、あたしは耐えられずに仰向けになった。

「もうやめなよぉ、たっくん!!」

母は部屋の隅で顔面を腫らして小さくなって体を震わせていた。

まるで子供のようだ。
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