またいつか君と、笑顔で会える日まで。
「彼女はたくさんの辛い経験をしてきたはずです。最期のときもきっと相当な痛みをともなったでしょう。辛かっただろうし悲しかったでしょう。でも、あなたとの思い出は彼女にとって幸せで楽しいものだったはずです」

「え……?」

「彼女は死の直前にあなたにラインを送っています。119番や110番で助けを呼ぶことなく、あなたにメッセージを送った。彼女がそこまでしてあなたに伝えたいことだった」

『だいすき ありがとう』9文字のメッセージをリリカちゃんは最期に私に伝えようとした……?

「それと、一つ聞きたいのですが……これに覚えはありますか?」

警察官が差し出した透明な袋に入っていたもの。それを見た瞬間、胸の奥底から感情が噴水のように沸き上がってきた。

どうして。どうしてこれを……。

「彼女の右手の中にこれが握られていたんです。お守りのようにとても大切そうに握っていたから気になっていたんですがどうしても理由が分からなくて」

「それは……」

「どうしてあなたの名前が書いてある消しゴムを彼女は握り締めていたんでしょうか?」

「分かりません。でも、私が……高校受験の時にリリカちゃんに貸してあげた消しゴムです」

「そうだったのね」

それはあの日、入試の日に私がリリカちゃんに貸してあげた消しゴムだった。

【青木】とマジックペンで名前の書かれている私の消しゴムをリリカちゃんは最期の瞬間まで握り締めていたなんて。
< 175 / 183 >

この作品をシェア

pagetop