またいつか君と、笑顔で会える日まで。
「お母さんなら家にいますから」

「なんだよ、冷てぇなぁ。久しぶりに会ったのに」

「あたし、これからバイトなんで」

「おい、待てよ」

高橋の横を通り過ぎようとしたとき、高橋はあたしの右手首をギュッと掴んだ。

「痛っ、離してもらえます!?」

「なんだよ、その髪と化粧。中学の時は美少女だったのにもったいねぇなぁ」

高橋はあたしのことを上から下まで舐めるように見つめた後、吐き捨てるように言った。

「あなたにどうこう言われる筋合いないんで」

「黒髪に戻せよ。そのほうが可愛いぞ?」

「では、さようなら」

手を振りはらうと、高橋はぎろりとあたしを横目に睨み付けて右足を振り上げた。

右足はあたしの腰に当たり、突然のことに受け身を取れなかったあたしはその場に尻もちをついた。

「っ……」

反射的に手で支えようとしたせいで左手を擦りむいた。細かな砂利が手のひらに食い込み、わずかに血がにじむ。

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