またいつか君と、笑顔で会える日まで。
「ナメた真似してんなよ、コラ」

座り込むあたしに凄み、右足で砂をかけると高橋は苛立った様子でアパートの階段を上がっていった。

「いたたっ……」

パンパンっと手についた砂利を払い落とし立ち上がる。

どうしてあんな男と母は4年間も付き合っているんだろう。

シラフでも自分の意にそぐわないことがあるとああやって暴力を振るってくる。

お酒が入ると暴言、暴力は酷くなる。

夜中に母と大喧嘩になり警察沙汰になったこともある。そのたびに母は「あんな男とはもう別れる!」と啖呵を切るくせに翌日には今までのことが嘘のように「たっくん」とあの男にすり寄ろうとする。

「あんな男とはもう別れて!!」

中二のときから何度も今のように暴力を振るわれ、あたしは必死に母に頼み込んだ。

彼氏を作るなとはいわない。でも、あの暴力男だけは話が別だった。

あの男は異質だ。何を考えているのかも分からないしいつか何かをしでかすような恐ろしさがあった。

でも、母はあたしの願いを受け入れてくれなかった。

それどころか「たっくんを怒らせたリリカが悪いのよ。ちゃんということを聞きなさい?」とたしなめられる。

握られた手首にはくっきりと高橋の親指のあざができている。

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