またいつか君と、笑顔で会える日まで。
「それから学校にも通えなくなってしばらく家に引きこもってたのよ。でも、頑張って勉強して青光高校に入学したって聞いて、私も嬉しくなっちゃって。だけど、いつもなんだか寂しそうな顔をしてるから気になってて……。でも、よかった。あなたみたいな可愛らしいお友達ができたのね」
おばさんはホッとしたように目尻を下げた。
「はい、着いた。萌奈ちゃんのおうちはここよ」
おばさんが指さした先には2階建ての洋風な造りの家があった。
ナチュラルな雰囲気の洋風塀瓦の乗ったアールの曲線の門柱にはガラス素材の【青木】という表札が掲げられている。
玄関口まで続く曲線のアプローチの周りは芝生が敷き詰められていた。
「へぇ……素敵なおうち」
「奥さんがまめな人でねぇ。家庭菜園とかガーデニングなんかもやってるのよ」
自分のことではないのに、なぜか斎藤さんが自慢げに鼻を鳴らす。
「いい家族なんだよ。萌奈ちゃんのうちは」
「そんな感じがします」
「荷物、どうもありがとう。助かったわ」
斎藤さんはあたしの手から荷物を受け取ると、にっこり笑った。
「萌奈ちゃん、すごく優しい子なの」
「はい」
「でもね、あなたも優しい子よ」
「え……?」
優しい子……?あたしが?
ポカンッとするあたしを置き去りにして斎藤さんが手を振って隣の家に入っていく。
放置子、いらない子、可哀想な子、卑しい子、貧しい子、ネグレクトされてる子。
今まで誰かに優しい子と言われたことなんて一度もなかったような気がする。