またいつか君と、笑顔で会える日まで。
「昇降口まで追いかけたんだもん。もしかしてあの傘ボロボロだったから使いたくなかった?え、意外とそういうの気にする人?」
「違う、そうじゃなくて……――」
「じゃあ、なんで使わなかったの?ねぇ、萌奈。言いたいことは頭で考えてるだけじゃ相手に1ミリも伝わらないんだよ。言わなきゃ分かんないよ。分かってあげられないよ」
リリカちゃんは子供でも諭すかのような口調で言った。
その声があまりにも優しくて胸の奥底から不思議な感情が沸き上がってくる。
「どうして……」
「うん」
「うちの場所が分かったの?」
「は?そっちか!!普通なんで来たのとかそういうこと聞かない!?」
言われてみてからハッとして口をあんぐりと開けた。
確かにそうだ。それも気になる。
「いやいや、感情が表に出すぎだから」
「で、でも、リリカちゃんに教えたことなかったから」
「まあいいや。先生に聞いたら個人情報がどうたらこうたらって教えてくんなくてさ。でも、番地以外は教えてくれたからこの辺りかなぁーって目星をつけて歩いてたわけ。で、近くを歩いてたおばさんに「青木萌奈ちゃんって知ってますか?」って聞いたら、お隣さんだったってわけ。すごいミラクルでしょ~?」
「え……」
「お隣って斎藤さんでしょ?あのおばちゃんパワフルだねぇ~。歩きながらずーっと一人でしゃべってんの。半分は聞き流したけど、すごい疲れちゃった」
「あぁ、斎藤さん……」
確かに隣の家には斎藤さんというおしゃべり好きなパワフルなおばさんが住んでいる。
でも斎藤さん……まさかあの話、してないよね……?
ゴクリと生唾を飲み込んでから恐る恐る尋ねる。