またいつか君と、笑顔で会える日まで。
「斎藤さん……なんか言ってた?」

「あそこのスーパーはこの時間お弁当が半額なんだとか、そんなことばっかりしゃべってたよ」

「そ、そっか。そうだったんだね……」

ホッと胸を撫で下ろす。

リリカちゃんの反応からしても何も聞かされていないようだ。

斎藤さんは私の過去の出来事を全て知っている。そして、私も斎藤さんのことをよく知っていた。

昔から子供が大好きで、自分の子供が欲しくて何年もの間苦しい不妊治療したもののとうとう斎藤さんのお腹には赤ちゃんが宿ってくれなかったらしい。

『うちは子供がいないでしょ?だからね、わたしは萌奈ちゃんのことを自分の娘みたいに思ってるの』

おばさんはいつも私を気にかけ、声をかけてくれた。

だから、心苦しかった。中二のあの日、私がした行為は両親を……そして、自分のことを娘みたいに思ってくれているおばさんをひどく傷付ける結果になってしまった。

喉の奥が苦しい。あの日の、ロープの感覚が今もまだ体に残っている。

「――萌奈?どうした~?」

「あ、ごめんね。それでどうしてうちに……?」

「そうそう。そこが肝心なところなのよ!実はね、これを届けに来たの」

そう言うとリリカちゃんはバッグの中から何かを取り出した。
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