またいつか君と、笑顔で会える日まで。
「じゃあ、ヒント。高校の入学試験の日に隣の席の女の子に萌奈は何かを貸してあげました。さて、それはなんでしょうか?」
高校の入学試験の日?
記憶をさかのぼる。
あの日は朝から冷たい雨が降っていた。試験会場に着き椅子に座り外を眺めていた。
窓ガラスを叩く雨の音が私の気持ちを落ち着かせてくれた。
そのとき、隣の席の女の子が「あっ」と声を漏らした。
声のする方向に視線を向けると、女の子はペンケースの中身を机にひっくり返して「終わった。消しゴムない」と呟いて天を仰いだ。
と同時に試験官が部屋の中に入ってきた。
「予備に持っていた消しゴムを貸した?」
「――正解!!」
「嘘。それってまさか」
「そう!そのまさか!」
「そうだったの!?あれ、リリカちゃんだったんだね」
あのとき、消しゴムを渡そうかどうかためらった。
私が貸さなくても誰かが貸してくれるかもしれないとも思った。
だけど、とっさに体が動いていた。
『よかったらこれ使ってください』
声を潜めて言うと隣の席の女の子の机の上に消しゴムを乗せた。
『ありがとう……』
女の子の言葉に私は前を向いたまま小さく頷いた。
高校の入学試験の日?
記憶をさかのぼる。
あの日は朝から冷たい雨が降っていた。試験会場に着き椅子に座り外を眺めていた。
窓ガラスを叩く雨の音が私の気持ちを落ち着かせてくれた。
そのとき、隣の席の女の子が「あっ」と声を漏らした。
声のする方向に視線を向けると、女の子はペンケースの中身を机にひっくり返して「終わった。消しゴムない」と呟いて天を仰いだ。
と同時に試験官が部屋の中に入ってきた。
「予備に持っていた消しゴムを貸した?」
「――正解!!」
「嘘。それってまさか」
「そう!そのまさか!」
「そうだったの!?あれ、リリカちゃんだったんだね」
あのとき、消しゴムを渡そうかどうかためらった。
私が貸さなくても誰かが貸してくれるかもしれないとも思った。
だけど、とっさに体が動いていた。
『よかったらこれ使ってください』
声を潜めて言うと隣の席の女の子の机の上に消しゴムを乗せた。
『ありがとう……』
女の子の言葉に私は前を向いたまま小さく頷いた。